MEDIA CENTER
学校での電子図書館の効果的な周知方法
電子図書館コラム2024.05.19
現在、多くの学校が電子図書館を導入していますが、利用が伸びないという課題を抱えている学校もあるかもしれません。せっかく導入した電子図書館が活用されないのは、非常にもったいないですよね。
特に導入初期は、新しいサービスを広めるのは容易なことではありません。情報が生徒に行き渡らないだけでなく、興味を持ってもらえないこともありますし、実際に活用してもらえないことも多いです。これらの問題を解決するためには、効果的な周知方法を見つけることが必要です。
このコラムでは、本校の生徒に聞いた、特に効果があった3つの方法を紹介します。これが、より効率的な周知方法を見つけるためのヒントになればと思います。
1.図書館ガイダンス
生徒に聞いた電子図書館を知ったきっかけとして、最も多かったのが「図書館ガイダンス」でした。
本校では、入学後すぐに新入生向けに図書館ガイダンスを実施し、その際に電子図書館の紹介もしています。この機会を通じて多くの生徒に電子図書館の存在を知ってもらうことができ、これが最も効果的な周知方法となっているようです。
ガイダンスは、情報科の授業と連携して実施されており、電子図書館の役割を学習や情報共有ツールとして日常的に生徒が利用するプラットフォームの一つとして紹介しています。説明では、以下の4つのポイントに焦点を当てています。
①利用規定、使い方
②ログイン設定
③電子書籍体験ゲーム
④利用状況、よく利用されるもの
新入生対象に行った調査結果では、入学後に電子書籍を初めて利用した生徒が過半数(60.3%)を占めています。数年前に比べて、電子書籍の利用経験がある生徒の割合が増加してきていますが、それでも電子図書館をきっかけに利用する生徒もまだまだ多くいます。
生徒の多くは、利用する前にどんな使い勝手なのか、どのくらい役に立ちそうか、どのくらい利用されているのかといったことが気になるようです。そのため、ガイダンスではこうした疑問や不安を解消するように心がけています。例えば、実際にログイン設定して利用のきっかけを作り、次回からの利用をしやすくしています。また、電子書籍体験ゲームを通じて生徒が楽しみながら操作を体感できる工夫をしています。これについては、いずれ詳しく紹介したいと思います。
2.オープンスクール・学校説明会
生徒に聞いた電子図書館を知ったきっかけとして、次に多かったのが「オープンスクール」や「学校説明会」でした。
特に私立学校や公立の高等学校では、入学前に生徒や保護者向けに学校の体験入学や説明会が行われることが一般的です。入学後にどう周知するかを考えがちですが、入学前から周知する方法も効果的なようです。
本校では、例年夏から秋にかけて複数回オープンスクールを開催し、学校図書館も自由に見学できるようにしています。その際には、電子図書館の紹介だけでなく、実際に電子図書館を体験できる機会を設けています。中学生や保護者たちが興味津々で電子図書館をチェックしている様子が多く見られ、「自宅でも利用できますか?」「借りるのは無料ですか?」「紙の本と電子書籍の両方で同じものが読めますか?」といった質問も寄せられています。
近年は、新型コロナウイルス感染症対策のため電子図書館の紹介のみが実施されていますが、それでも多くの方々に周知されています。学校図書館だけではここまで周知されなかったので、オープンスクールや学校説明会での周知の効果は予想外でした。
ここで重要なのは、周知には学校全体のバックアップがあってこそ効果が増すということです。
学校図書館からのアプローチはもちろんですが、校内見学の際に教員や生徒たちが紹介したり、配布される学校パンフレットでも紹介されたりすることで、多くの人に電子図書館を知ってもらっています。
3.教員の口コミ
生徒に聞いた電子図書館を知ったきっかけとして、次に多かったのが「口コミ」でした。
せっかく電子図書館を周知しても、継続的な利用がなければその存在感は薄れてしまいます。新入生だけでなく在校生に対しても、効果的な周知タイミングを模索する必要がありますが、なかなか難しい課題です。結論から言うと、学校図書館が何かするよりも、他の人からの周知が遥かに効果的です。
特に、教員による「口コミ」は影響力が大きいと考えられます。
本校では、授業で電子図書館の利用を教科担当の先生が紹介する場面が多くみられます。また、利用者IDやパスワードを忘れた生徒には再度ログインするようアナウンスしています。さらに、朝の読書でクラス担任が電子図書館の利用を促していることもあります。進路指導でも電子図書館の利用を推奨しています。このように、教員の口コミを通じて、生徒たちに電子図書館の価値や利用方法を広く知らせています。
【番外編】ポスター・図書館通信
番外編として、紹介した3つ以外にも、実際に行った周知方法の効果と課題について触れておきたいと思います。
ポスター掲示の効果
多くの学校がポスターを利用して情報を周知しようとしますが、実際の効果はあまり高くありません。本校では過去5年間、全クラスにポスターを掲示してきましたが、コストや労力に見合った効果を感じることはできませんでした。完全に効果がないわけではありませんが、すでに紹介した方法を先に試す方が効果的だと実感しています。ただし、ポスター掲示が習慣化し、クラス担任の先生から「ポスターはまだですか」と催促されることが増えたのはありがたいことです。
図書館通信の活用
本校では、図書館通信を月に1回オンラインで配信しており、全校生徒の約半数が閲覧しています。この方法はやや効果が高いと感じていますが、さらに改善の余地があります。例えば、電子図書館へのダイレクトリンクやID・パスワード忘れの申請フォームを添付することで、再度アクセスしやすくしています。配信直後には利用が増加しますが、それでも利用者数は十分ではありません。継続的なアプローチが重要であり、手軽に情報発信や情報収集ができるSNSを活用するなど新しいアイデアを取り入れていくことも検討中です。
以上、周知方法についてご紹介しました。 特に図書館ガイダンスは効果的ですので、ぜひ実施してみることをおすすめします。 一度でもしっかりと周知する機会を設けることで、その後の利用状況が大きく改善されたという実感があります。紹介した内容が、少しでも役に立てば幸いです。