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学校図書館での電子書籍のニーズと課題(1)

電子図書館コラム2022.04.14

電子図書館の導入後、様々なコンテンツを充実させたいと考えている学校も多いでしょう。しかし、学校図書館では予算的な問題から難しいのが現状です。予算の問題に加えて、コンテンツの選定に関する課題も多く存在します。
 
このコラムでは、電子書籍に対するニーズやメリット・デメリットについて、導入校の現状を紹介します。学校が電子図書館を導入した際の実際の状況をリアルにお伝えし、現在どのように活用されているのか、そして将来的にはどのような活用方法が模索されているのか、共有できればと思います。
 
この内容は、私が以前行ったインタビュー調査の結果に基づいています。2019年時点で電子図書館を導入した高等学校(中高一貫校を含む)10校を対象に、学校向け電子書籍の現状を尋ねました。詳細については、こちらからご覧いただけます。

 

 

 

 

1.小説

小説は、導入校で最もニーズのあるジャンルとなっています。電子図書館の利用促進の呼び水として、積極的に選書されているようです。特に、需要が高かったのが【ライトノベル】です。
 
積極的に購入する学校では、ライトノベルのような流行りものは、ライセンス失効や販売中止などによって閲覧ができなくなっても、それほど問題視されていないようです。また、紙書籍よりも管理がしやすいという意見も多く聞かれます。電子書籍が消耗品として扱われる場合、除籍処理がより簡便になり、利用者だけでなく学校図書館担当者にもメリットが大きいです。
 
紙書籍では購入に消極的な学校が多い一方、電子書籍に関しては前向きに購入を考える意見が多いようです。ライトノベルは文庫本が多いため、携帯しやすい点は電子書籍も同じです。文字の拡大や暗所でも読めるという利便性や、経年劣化や紛失のリスクがない点も電子書籍の大きなメリットです。これらの理由から、本校では、紙の文庫本を購入する必要性を感じなくなり、文庫本の購入件数が減少傾向にあります。
 
一部の学校では、娯楽性の高いライトノベルよりも、【文学的に評価の高い作品】の需要が高まっています。特に、話題性のある文学賞作品は、生徒に読ませたいという教員や学校図書館担当者からのニーズが高いようです。電子書籍での購入は、書架の収納不足対策としても検討されています。
 
ただし、電子書籍のデメリットとしては、価格が高く、タイトルが不足している点が挙げられます。電子書籍は、紙書籍の2倍以上する価格帯や発売から1年以上経過しているものが多く、新刊の少なさも問題視されています。これらは、電子書籍が抱える最も大きな課題と言っても過言ではありません。これについては別コラムで取り上げる予定です。
 
この状況について、「惜しい…」というのが正直な気持ちです。もう少しタイトル数が増えれば、価格が抑えられれば、新刊が充実すれば、もっと多くの生徒に利用されることでしょう。少しずつ改善されている状況ですが、特にニーズの高いジャンルから改善されることを期待しています。 
 
 
 
 
 

2.語学・洋書

語学や洋書は、小説と並んで最もニーズのあるジャンルとなっています。特に【英語多読本】は需要が高く、多くの学校が英語多読本を利用するために導入を決定するほど、このジャンルの重要性が伺えます。
 
授業や学習に役立つコンテンツは、教育現場での利用価値が非常に大きいとされています。多くの学校では、多少のコストをかけてもこれらのコンテンツを利用する価値があると考えています。しかし、導入後に感じたこととして、予想よりも授業や学習での利用頻度が低く、コストパフォーマンスが悪いという意見が多く聞かれました。本校でもそのような感触を持っています。
 
また、導入前には気づきにくい点として、2年間のライセンス期限が想像以上に短いと感じました。ライセンス期限が切れると再購入が必要となり、追加コストが発生します。これが、学校向けのコンテンツが抱える大きな課題であり、学校における電子図書館運用の難しさを感じさせる部分です。
 
そのため、本校では電子書籍の再購入をせず、紙書籍に戻すことにしました。しかし、ある学校では、このライセンス期限を新しいコンテンツに強制的に入れ替わる機会と捉え、むしろメリットとして受け入れているところもあるようです。このように、学校ごとにライセンス期限に対する考え方が異なるのは興味深いですね。
 
最近では、2021年以降にライセンスが無期限で購入できるコンテンツ(買い切り)が登場し、状況が大きく変わっています。特に、英語多読本は多く提供され、比較的安価で購入しやすくなりました。これにより、本校でも再び電子書籍の購入を進めています。普段は和書を中心に選書しているため、洋書が後回しになりがちですが、今後は洋書の選書がしやすくなるかもしれません。ポピュラーなタイトルが増え、帰国生向けのハイレベルな洋書のニーズにも応えられるようになれば、学校向け電子図書館の価値がさらに高まるでしょう。
 
 
 
 
 
今回は、「小説」と「語学・洋書」についてお話ししました。これらのジャンルでは、コンテンツの不足やコストと利用頻度のバランスが課題となっていますが、コロナ禍以降の導入増加により、これまで進まなかった問題が急速に改善されています。コンテンツの充実やライセンス無期限モデルの登場など、今後の利用がさらに向上することが期待されますので、これからも電子図書館の活用を進めていきたいと考えています。
 
次回も各ジャンルのニーズやメリット・デメリットについて取り上げる予定ですので、どうぞお楽しみに。