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電子書籍のタイトル数

電子図書館コラム2021.10.21

今回は、電子書籍についてのお話しをしたいと思います。
 
電子図書館の利用にあたって、どのくらい電子書籍があればいいですか?
 
この質問は、電子書籍の価格やジャンルと同じくらい、よく聞かれます。
実際にやってみるまでわからないというのは、やはり不安ですよね。
  
そのため、電子図書館の導入を躊躇している学校図書館もあるのではないでしょうか。
または、電子図書館の利用が思うように伸びないのは、
タイトル数が不足しているからではと考えているかもしれません。
 
電子書籍のタイトル数は、予算の確保や利用の活性化などを図るうえで、
重要なポイントとなりますが、基準のようなものはありません。
 
学校や学校図書館の特性や状況など異なる部分はありますが、
目安を知りたいという学校図書館も少なからずあるかと思います。
そこで、本校の電子書籍のタイトル数について、現状報告したいと思います。
 
 
 
 
年間の電子書籍の購入タイトル数はどのくらい?
 
本校は、2015年度にトライアル開始、2016年度に正式に運用開始しています。
その時の状況については、リンク先からご確認いただけます。
現在、トライアル期間も含めると運用6年目となります。
この期間に購入した電子書籍のタイトル数を、下のグラフにまとめてみました。
  
 
 
 
◆電子書籍の年間購入タイトル数

・2015年度      50タイトル
・2016年度    362タイトル
・2017年度    510タイトル
・2018年度    445タイトル
・2019年度    428タイトル
・2020年度    481タイトル
・6年間の合計  2,276タイトル
・5年間の平均  445.2タイトル (2015年度を除く)

 
 
こちらは、1年間に新規購入した電子書籍のタイトル数を集計し、
2015年度~2020年度までを年度別に表したものになります。
 
全期間の総購入タイトル数は、2,276タイトルで、
年間の平均購入タイトル数は、445.2タイトルとなっています。
 
なお、2015年度はトライアルのため、厳密には購入していないのですが、
保有タイトルとしてカウントしています。
したがって、年間平均は2016年度~2020年度の5年間で計算しています。
年度によって増減がみられますので、その理由を説明したいと思います。
 
 
 
【2015年度】50タイトルで電子図書館のトライアルを実施
2016年2~3月の2か月間、生徒・教員 合計89名を対象にトライアルを実施しました。
2月に30タイトルで開始し、3月に20タイトルを追加、最終的に50タイトルとなりました。
これは、1か月間のトライアル結果から、30タイトルでは少な過ぎると判断し、
追加することにしました。予想以上に電子図書館が利用されたので、驚いた記憶があります。
残り1か月間のトライアルがありましたが、終了を待たずに本格的な導入準備に移行しました。
 
この当時、電子書籍の提供タイトル数は、約8,000タイトルしかなく、
タイトル数やコンテンツの中身は、正直なところ、学校図書館にとって魅力的ではなかったです。
それでも、この時点で導入を決断できたのは、生徒の利用状況から将来性を感じたからです。
電子書籍については、当初から課題を抱えてスタートしましたが、
タイトル数の増加やコンテンツの充実は、今後、確実に改善されると思っていたので、
気長に待とうという感じでした。
 
 
 
【2016年度】 導入初年度は300タイトルを目標にしたが、理想は500タイトル
導入初年度は、1年間でどのくらい電子書籍が利用されるのか予測できないことから、
予算の投入を慎重に行う必要がありました。
とりあえず、目標とするタイトル数を300タイトルに設定しましたが、
実際は、予算枠で購入できるタイトル数を目標値に近づけるといった感じでしょうか。
比較的に安価な電子書籍を多めに選書するなどして、タイトル数を確保しました。
 
また、予想以上に利用状況が良く、急遽、目標値より購入タイトル数を増やしました。
この時の実感として、生徒数1400人の場合、最低でも500タイトルあるとよいと感じました。
しかしながら、高価な電子書籍を500タイトルも購入する余裕はなかったため、
362タイトルにとどまり、トライアルを除いた全年度のなかで最も少ない結果となりました。
これをもとに、次年度の電子書籍の予算を調整しました。
 
この当時、電子書籍の提供タイトル数は、約22,000タイトル(2017年3月末時点)で、
かなり増加してきましたが、学校図書館にとって魅力的なコンテンツは不十分なままでした。
もし、学校や学校図書館で活用できるコンテンツが充実していたら、
もう少しタイトル数が増加していたかもしれません。
 
 
 
【2017年度】 朝読書向けのコンテンツを積極的に購入し、購入タイトル数が増加!
2017年度に購入タイトル数が増加した主な理由としては、
電子図書館の利用の活性化を図るため、生徒の利用時間帯の統計をもとに、
最も利用が多かった朝読書向きのコンテンツの確保を積極的に行ったことです。
 
導入2年目は、電子図書館が何の目的で利用されているのか模索中でしたが、
朝読書の利用状況については、すでに電子図書館が学校図書館を上回っていたため、
電子図書館の活用の推進について、朝読書に舵を切ったかたちとなります。
本意としては、授業や学習での活用を推進したいところではありましたが、
問題や課題も多く、朝読書ほど活用されていないことから様子を見ることに。
 
この当時、電子書籍の提供タイトル数は、約31,000タイトル(2018年4月20日時点)で、
教養的・娯楽的な読み物も多く、生徒の興味関心を惹くような朝読書向きのコンテンツが
充実してきたことや、比較的に安価なコンテンツであったことがタイトル数の増加に
繋がったのではないかと思います。
 
 
 
【2018年度】 料金形態の変更により、購入タイトル数が減少!
2018年度に購入タイトル数が減少した主な理由としては、
電子書籍の価格設定が変更され、1タイトルあたりの価格が上昇したためです。
順調にタイトル数を確保していましたが、ここでペースダウンしました。
今後も、このような事業者側の価格設定の見直しや変更により、
タイトル数の確保に影響が及ぶ可能性は、大いに考えれますよね。
 
また、学校側の電子図書館や電子書籍の会計処理の仕方も関係していたと思います。
電子図書館の運用で発生する様々な費用をどのように取り扱っていくかは、
結構、大事だなと感じました。このあたりもかなり不透明な部分で、
他の導入校はどうしているのか気になるところですよね。
これについては、別コラムでいつか書きたいと思います。
 
 
 
【2019年度】 授業や学習向けの高価格帯のコンテンツの購入により、購入タイトル数が減少!
2019年度に購入タイトル数が減少した主な理由としては、
利用が活性化してきたため、これまで後回しにしてきた授業や学習での活用に対応すべく、
授業や学習向きのコンテンツの確保を積極的に行ったためです。
これらは、高価格帯のコンテンツが多く、購入タイトル数が減少しました。
 
高価格帯のコンテンツは、主に事典や図鑑などカラーやビジュアルが豊富なものや新刊が該当し、
紙書籍が出版されている場合、定価の2倍や3倍以上に価格設定されているものが多くみられます。
こうしたコンテンツは、生徒の興味関心や学習意欲を喚起する読み物としても、
内容が理解しやすく最新のデータが掲載されている資料としても適していることから、
需要が高いコンテンツとなっていますが、高価格のため購入タイトル数は必然的に減少します。
 
これは、現在においても課題の一つとなっています。
とくに、探究学習をするうえでは、専門書や学術書を十分に確保する必要がありますが、
元々、提供数が少ないうえに高価格となると、授業や学習での活用を推進したくても、
資料不足や予算の面で、電子図書館を学校図書館並みに活用するのは難しいのが現状です。
やはり、探求学習に適した資料は、紙書籍で収集した方がよいのかもしれないと考えたり、
現在も模索中です。とりあえず、準備をしなければ、いつまで経っても活用されないので、
少しずつ購入タイトル数を増やしていこうという感じでした。
 
 
 
【2020年度】 新型コロナ禍による影響により、購入タイトル数が増加!
2020年度に購入タイトル数が増加した主な理由としては、
やはり、新型コロナ禍で学校図書館の閉館や利用が制限されたことにより、
電子図書館しか利用できない状況となったのが大きいでしょう。
この状況を鑑みて、紙書籍の購入数を減らし、電子書籍の購入数を増やしました。
 
本校では、2020年3月~5月までの3か月間の臨時休校、
学校再開後は、感染対策のため約1か月間の分散登校や変則的なカリキュラム、
繰り返される数週間~1か月程度のオンライン授業や自宅学習などなど、
1年のうち約半年間、学校生活に制限がある状態となりました。それ以上かも…。
 
このような状況下で、学校図書館の利用に影響が出ないわけがありません。
すでに電子図書館を導入しており、生徒・教員への周知や利用が定着していたのは、
よかったと感じていますが、電子図書館しか利用できない状況となり実感したのは、
学校図書館のように利用されるには、まだまだタイトル数が少ないということです。
 
 
 
以上が、購入タイトル数が増減した経緯となります。
振り返ってみると、第一にタイトル数の確保を優先し、電子図書館の利用の活性化を図る。
第二に利用状況を把握し、より利用者の需要に合ったコンテンツを確保するという感じですね。
 
予算も限られているので、利用者の需要に合ったコンテンツを選書をするために、
どのように利用されているのか、事前に把握したいと考えていましたが、
ある程度のタイトル数がないとわからないというのが実感です。
利用者の需要を知るために、時間がかかってしまいました…。
 
 
 
最後に…

さて、事前に利用者の需要に合ったコンテンツを知るために、
タイトル数を確保する以外にも、参考になる方法が一つあります。

それは、学校図書館の利用状況から把握する方法です。
電子図書館の利用は、学校図書館の利用と共通した傾向がみられることが分かりました。
蔵書構成や選書の傾向を分析すれば、どんな需要があるのか分かる可能性が高いです。
電子図書館の運用方針がとくに決まっていない場合は、参考にしてみてください!
 
そうはいっても、学校図書館とはやっぱり利用されるものが違うんじゃないの?
電子図書館ならではの需要とかがあるんじゃないの?という、ご意見もあるかと思います。
そこで、次回のコラムは、どのような電子書籍を選書してきたのか、
需要のあるコンテンツやジャンルについて、詳しく書きたいと思います。
  
  
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